多くの在庫を抱えることで、販売機会の損失を防止したり、一度に大量の商品を仕入れることから、商品の単価を抑え、仕入れ時のコスト削減を実現したりなど、いくつかのメリットが挙げられます。
しかしながら、適切な数値を超える在庫を保有する場合、商品の品質低下や廃棄の発生、保有スペースや人件費など、必要以上のコストがかかってしまうなどといった懸念点も生じます。
今回は、在庫管理における一改善施策である「在庫削減」について、在庫削減を実施するメリットや効果、在庫を減らすための方法などをご紹介します。
在庫管理における改善とは
在庫管理における目的とは、保管現場をより円滑に機能させることで、空間やコスト、人などのリソースを最適化し、事業の利益、そして企業の経営状態の最大化を図ることです。つまり、在庫管理を改善することで、現場だけでなく、企業全体に影響を及ぼします。
保有する在庫を見直し、より適切な数量や品質での管理を目指す在庫改善は、「現状把握」「適正在庫の算出」「目標数値に基づいた在庫削減」の3段階に分けることができます。
①現状把握
現状把握では、その時点での在庫数や保管方法、商品の品質などの在庫状況に加え、業務フローや現場でのルール、情報管理の仕方など、現場での規則や目に見えない業務やモノ、情報などの「動き」まで確認する必要があります。
というのも、「在庫管理の改善=在庫数の削減」であるとは一概に言い難いからです。業務フローや在庫とそれに関する情報管理など、在庫数以外にも改善の余地があるケースがほとんどです。業務フロー改善や情物の一致を目指す場合は、在庫削減に加えて、従来の管理方法の見直しや在庫管理システムの導入などの施策も挙げられるでしょう。そのため、保有すべき適切な数値を算出する前に、今一度自社の現場に関して、細部まで把握することが必要となります。
②適正在庫の算出
現状把握を通して、倉庫などの保管現場での課題を洗い出したあとは、自社で抱えている在庫数が適切であるかどうかについて、数値を用いて確認する必要があります。ここで、根拠のない曖昧な数値のまま在庫の削減を行うと、販売機会の損失などといった、リスクにつながりかねないため、適正在庫を算出することで、明確な数値目標を設定するようにしましょう。
適正在庫とは、「企業利益の最大化」を目的とした、欠品状態に陥らない、最小限の在庫数を意味します。基本的に、適正在庫は「適正在庫=安全在庫+サイクル在庫」で求めることができます。
安全在庫とは、「欠品防止」を目的とした最小限の在庫数を意味します。在庫だけでなく、企業の利益最大化を目的とする適正在庫との違いとして、「在庫」により焦点を当てているといえるでしょう。
サイクル在庫とは、発注後から、次回発注するまでの期間に消費する在庫数の半分を意味し、平均需要とそれに対する在庫数を把握することができます。
適正在庫は、年間の平均在庫数との比較が効果的だといわれています。また、適正在庫も、年間もしくはそれよりも短い期間で、定期的に算出することで、常に在庫数の最適化を図ることができるでしょう。
③目標数値に基づいた在庫削減
適正在庫で算出した目標数値を基準に、在庫を削減するための施策を実施します。単に仕入数を減らすだけでなく、リードタイムの短縮や保管方法の変更など、現場全体での改善が必要となることもあります。
在庫削減を行うメリットや効果
つづいて、在庫削減を行うことで得られるメリットや、在庫改善における効果についてご紹介します。
①キャッシュフローの最適化
在庫数を減らすことで得られるメリットの1つとして、「キャッシュフローの最適化」が挙げられます。前提として、ほとんどの場合、商品の仕入れは現金で行われるため、「在庫=資産(現金がかたちを変えたもの)」であるという認識を持つ必要があります。
そのため、在庫が売れ残ってしまうと、仕入れにかかったコストを回収、つまり利益を生み出すことはできず、自社の資産は減少したままとなります。在庫は現金がかたちを変えたものではありますが、売れ残りの廃棄商品となってしまえば、現金のように自由に運用することはできません。そこで、需要予測に基づき、欠品を防ぐために最適な数値である「適正在庫」を基準とした在庫の削減を行うことで、キャッシュフローの悪化を防ぐことにつながります。
②保管場所や維持経費の最適化
売れ残った在庫を処分する場合、廃棄にもコストが発生します。さらにいえば、廃棄にかかる処分コストだけでなく、仕入れ、入庫、管理、出庫など、商品が保管場所に入ってから出るまでの作業にも無駄が生じてしまいます。
適正在庫に基づいて在庫を削減することで、それらの余分なコストや作業工数の削減を実現できるだけでなく、保管場所や賃貸料、光熱費といった維持経費、さらに管理に要する人件費などの最適化を見込むことができます。
③商品の品質維持
欠品防止のために、多くの在庫を保有していても、長期間にわたる保管になれば、自然と商品の品質も低下します。さらに、品質だけでなく、トレンドや市場ニーズの変化、賞味期限切れなど、商品そのものの価値が下がってしまい、結果的に想定していた価格を下回っての販売や、廃棄商品となってしまうことも少なくありません。
したがって、適正在庫で算出した数値目標を基準に、それまでの在庫数を減らすことで、商品在庫全体の品質や価値の維持につなげることができます。とくに、実物を手にとって見えないECサイトの場合、商品の品質がユーザーの期待を下回ることがあれば、リピート顧客を獲得する機会を逃すことにもつながりかねません。反対に、顧客の期待を上回る価値を提供できれば、リピート層の獲得や口コミでの拡散など、ECサイト全体の評価向上にもなり得るでしょう。
在庫を減らす方法とは?
実際に、在庫の削減を実現するための方法をご紹介します。
在庫の数量を減らすうえで、着眼すべきポイントは「在庫の種類」と「作業工程」であるといえるでしょう。それぞれ解説します。
①在庫の種類を減らす
在庫の数量は、保有する在庫の種類と、それぞれの数を掛け合わせた数値の合計で示すことができます。そのため、在庫削減の手段として、在庫の種類を見直すことが挙げられます。適正在庫に基づいて、各商品の在庫の数量を減らすことに加え、各商品の売れ行きにも着目することが求められます。とくに、出庫の頻度が少ない、つまり在庫に動きがあまり見られない商品に関しては、仕入れの中断を検討することができるでしょう。
理由として、保管する在庫の数でなく、種類を見直し、削減することで、保管スペースの最適化を見込める点が挙げられます。在庫は種類ごとに管理することがほとんどであるため、余分な在庫を減らし、その分に空きスペースを生み出すことで、在庫の置き方や保管方法の改善、維持経費や作業工数の削減にもつなげることができるでしょう。
②作業工程をスリム化する
倉庫などの保管現場での作業工程や工数をよりシンプルにすることで、在庫の出庫までの実際の動きの見える化につながります。過剰に在庫を抱えてしまっている場合は、「なにが・どこに・どのくらいあるか」が明確になっていないケースが少なくありません。保管方法が煩雑であると、商品の入荷時期を考慮せずに出荷してしまい、結果として商品価値の低下によって廃棄になってしまうことがあります。また、保管場所が曖昧であったが故に、余計に仕入れを行ってしまったという事態も招きかねません。
そのため、現場での保管に関するルールを設定し、社内でしっかりと浸透させることで、在庫管理の業務プロセスをシンプル且つ可視化できるようにする必要があります。エクセルや書類など、データ上の在庫情報と、実際の在庫数に差が生じる場合には、在庫の実物と情報の一元管理をリアルタイムで実行する在庫管理システムの導入の検討もおすすめです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
在庫管理は、企業全体の利益に影響を及ぼすことから、大きな役割を果たしています。在庫管理の改善施策を検討するうえで、在庫削減こそが最良の手段であるとは一概に断言することはできかねます。しかしながら、在庫の削減を実施することで、キャッシュフローや保管スペース、人員配置の最適化、商品の品質維持など、多くの効果を期待することができます。ぜひ参考にしてみてください!
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